
初めて購入した着物は芸者に憧れて購入した黒地の御所模様
着物は訳もなく好きでした。好きというより憧憬のようなものがありました。何より絵画のような図柄…それは独特の風合いがあって、日本独特のデザインともなっています。
そういうのを見ているだけでも好きでしたし、自分のものとして所有したいという気持ちがありました。私が自分で始めて着物を購入したのは21才の時。黒地に手描き友禅の御所模様でした。小さい頃から芸者さんの粋さに憧れ、中学生の時に行った京都の修学旅行で芸者人形を買ってきてしまったくらいです。
この時も粋な黒に決めていたので、母たちの反対の意見も耳を貸さず黒地を選択しました。この着物を着る機会は、成人式には参加せず、会社の仕事初めでも時間を間違え、ラッシュで着物は無理と着ませんでしたので、着る機会はなかなかありませんでした。結局着たのは友人の結婚式だけ。しかも黒地に粋すぎた着物は、出席者から浮いてしまって玄人筋に見られたようで若干当惑しました。まだ若干21歳の若い娘が着る図柄ではなかったかもしれません。自分のお給料の2倍位もする着物でした。
その頃は黒が好きで、いきがって黒地にしましたが、今振り返ると若い素肌が似合う明るい色にしておけばよかったかもしれません。その後もその着物を所有した満足感も持てず、それは実家に預けたままタンスの肥やしになっています。
もう一枚の紬の着物は結婚した時に母親が購入してくれたもので、藍色に渋い柄の入った趣味風着物。こちらは裏地を赤で仕立てました。
気に入っていたのですが、やはり1~2回着たのみ。これも現在の私の家でタンスの肥やしになっています。裏地をいきがって朱に近い赤にしたので、年齢にそぐわなくなってしまいました。かといって裏地を替えるのも面倒で、そのまま放置しています。私は着物が好きなので、和裁教室にも一年程通い薄紫のウールの着物、浴衣と綿紬の一重も縫いあげましたが、ジーパンで走り回る日の方が多くどれも一度も着ていません。現在は坂の街に越してしまったために、毎日リュックサックとスニーカーの日々。
今となっては何で若い時にあんなに着物に熱を入れたか、その情熱の片鱗も思い出せません。でも着物は着ることが叶わなくても、あの絵画的色彩を見るだけでも、一抹の精神的清涼感が得られるのかもしれないと思っています。
着物から醸し出される美しい色や図柄は、芸術に近いものなので眺めているだけでもいいのだと自分に言い聞かせている昨今です。